ifの屍
四分の一は僕の遺伝、四分の一は僕の境遇、四分の一は僕の偶然、僕の責任は四分の一だけだ
芥川龍之介「闇中問答」
どこの学部でもだけど、大学の専攻を選ぶには二つのパターンがある。ずばり、それが好きなのか好きではないのか。
私は好きだから文学部を選んだし、私の周りもそうだった。
けれどみんな四年間で終わらせて、一般的に言えば文学とは関係のないところへ就職した。
私はプライドがチョモランマ級にあるので、文学に関してみんなに負けたつもりはない。けれど勝ったつもりもない。
違いはただ、就職か進学かの選択だけだ。持っているものに差はなかった。読んだ本の量や知っている理論の数は、そんなの時間の問題だ。
この差異を決めるのは遺伝、境遇、偶然、自責の四つ……を全て含めた偶然というものなのだろうけど、それにしたって、みんなどこかで可能性を捨てた、いや可能性が死んでいるのだ。どんな境遇にも言えることだけど、人は皆常に誰かの可能性の屍の上にいる。
まだ学生で良いね、なんて言われると、ふざけるなこちとら生活費自分持ちフリーター院生で時間も体力も常に限界自転車操業だ馬鹿! と内心思っていたけれど、このことに気づいてからはあんまり思わなくなった。不安定な足元は、積まれた屍の山だったんだな。
だからあと2年弱だとしても、その分本気でやるのが四分の一の僕の責任であり権利であり義務なんだ。
自分がifを殺す番になってようやく気が付くとはね。